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弘前城の落葉

青森に来たら、やはり弘前には立ち寄りたい。
そう思って弘前に投宿し、朝、お城を散策してみた。
冷たい雨が降り、ときどき白い物も混じるというなかでしたが、
大手門から数えて3番目の門の手前では、
ごらんのような紅葉の赤絨毯が敷き込まれていました。
まさに陶然たる世界。
人のゆく裏に道あり花の山、という競馬の穴狙いの格言がありますが、
まさにそんな言葉がぴったりの光景であります。
江戸期に建築された城郭建築は
権力の象徴としての荘厳装置であり、公共事業だったわけですが、
その時代は大規模な土木工事の技術進展があった時代でもあった。
そういう土木デザインの大きな要素技術として
「植栽のデザイン」ということはきわめて肝要な技術であったのでしょうね。
土木による自然改造と同時に、自然エネルギーそのものである
木の植栽をこころがけ、その樹木の選定自体でデザインを考えていた。
この弘前城は春のサクラが全国一の評価が高いのですが、
この季節に訪れてみて、その紅葉・黄葉・常緑のバランス、
その展開といったものも、デザインされているのだと気付く。
写真の紅葉の絨毯の下には石段が隠されていて
急傾斜の土塁を上っていく場所になっているのですが、
こういう場所に集中的にモミジを植え込んで、
秋にはこのような光景を造形しようと、設計者は考えたに違いない。
この時代の設計者としては、茶人・造園設計の小堀遠州などが知られるけれど
江戸期のこういうデザイン感覚が、今日にまで及ぼしている
影響力の大きさは計り知れないと思う。
花鳥風月、という日本人のデザイン思想は、
こういう場所を訪れることで、先人の感覚として体感することが出来る。
そしてマザーとしてのこういう空間に圧倒的に癒される。
日本人であるということを、こころから喜びたいと思う次第です。

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